第2回 湯船につかること

うちの夫は中国人です。以下、アイカタといます。中国には、日本のように湯船につかる習慣がありません。ほとんどの家には浴槽がなく、シャワーのみです。(シャワーが各家庭につくようになったのもここ10~15年くらいで、以前はたいていの職場に浴場があり、みなそこで身体を洗っていました。)

 

これは家庭によっても違うと思いますが、私の家は小さいころからほぼ毎日湯船につかる習慣があったので、結婚してからも毎日のようにお風呂をたいて入ろうとしましたが、最初のころ、アイカタは

「なんで毎日お風呂につかるの?別にシャワーでよくない?」

と、よく言っていました。

「お風呂につからないと、温まった気がしない。シャワーだけだと物足りない気がする」

と説明しましたが、もともと湯船につかる習慣のないアイカタには理解できないようで…。お風呂を沸かしても、アイカタは「のぼせる~」と言って長時間つかることはできませんでした。(温泉は好きなようで、温泉に行くと時間は短くてもつかっていましたが)

 

「日本人は、毎日お風呂に入って、あんなに大量に水を使って無駄だとは思わないのかな。」

「でも、炊き返すし、残り湯はたいていのお家では洗濯に使っているよ」

「それでも、その水の全部を利用してはいないよね。」

アイカタは、中国の特に水不足の深刻な地域の出身で、実家のほうではいまだに断水が頻繁にあります。なので、水をとても大切に使います。例えば、バケツに入れた水で何かを洗って、その水がちょっと汚れたくらいでは捨てずに、掃除や洗濯に使おうとしたり、洗車には水を大量に使うため、洗うのをためらっていたりします。(中国では、日本のように頻繁に洗車はしません。車体の色が不鮮明になるほど埃がたまっていても、あまり気にしません)

あと、「湯たんぽはエコなんだよ、あんかや電気毛布と違って、電気を使わないし」と説明したとき、

「どこがエコなの?水を結構たくさん入れるよね。水がもったいなくないの?」

という反応が返ってきて、私にはとても新鮮でした。アイカタは、私に水がとても大切で限りある資源なのだと気づかせてくれます。

 

そんなアイカタは最近では、私がお風呂を入れたときは、つかるようになりました。特に冬の寒い北海道では、お湯につかると芯から温まると気づいたようです。以前と変わらず、水を無駄にはしませんが。

 

ところで、私が中国に留学しているときは、ずうっと湯船につかれない生活で、最初のころは、毎日シャワーだけというのが変な感じがしていました。留学先が極寒のハルビンだったので、他の日本人留学生とも冬は湯船につかりたいよねという話もよくしました。ですが、それにもだんだん慣れてきて…

「湯船につからなくても、具合悪くなるわけでもないし、死ぬわけでもないしね」という気分になってきます。

 

韓国人の男性と結婚した友達から、結婚当初、

「うちのだんな、週に一回はあかすりをしないと気持ち悪いって言ってて、『どうして日本人はあかすりをしないの?あかがたまって気持ち悪くないの?』って言うの」

という話を聞いていましたが、彼が来日して数年たってから、

「日本に来てあかすりしなくなったけど、別にしなくてもなんでもないね。病気になるわけでもないし、死ぬわけでもないしね」 と言っているというのを聞いて、笑ってしまいました。私が湯船につかれないことについて、中国にいるときに同じように考えたことを思い出しました。

 

それをしないと気持ち悪いほど身体にしみついている習慣でも、環境によってそれができない場合、驚くほどあっさりとその習慣が抜け落ちてしまうこともありますし、アイカタのように、いままでしていなかったことでも、環境や周りの人の影響によって、習慣化することもありますね。

 

異文化と接すると新鮮な発見がたくさんあります。