第8回 忘れられないクリスマス

韓国は国民の4割がクリスチャンであり、毎年、この時期に私は韓国の友人たちにクリスマスカードを送っています。韓国ではだいぶ前から日本と同じように、クリスマスにプレゼントを贈ったり、友人や恋人、家族と過ごす習慣があり、街はとても賑やかです。

 

が、中国でクリスマスが若者を中心に祝うようになったのはごくごく最近のことで、私が留学していた1998~2000年当時は、クリスマスを祝う習慣はありませんでした。クリスマスが近くなっても、街は何も変わらず、特に特別な装飾やクリスマスプレゼントのキャンペーンなどもしていませんでした。

ある夏の暑い日、大学の近くにある文房具屋さんにサンタクロースのポスターが貼られているのに気がつきましたが、それは年中貼られているようで、ホコリまみれになっており、お店のおじさんに

「これは冬に貼るものじゃないの?」

と聞いたら

、「外国っぽいデザインでかっこいいからずっと貼っている」

ということで。クリスマスには全く関係のない理由で貼られていたのでした。また、知り合いの子供が

「外国にはサンタクロースっていう人がいて、クリスマスにプレゼントをくれるんだけど、その人、中国は通らないんだって」

と言ったことが印象に残っており、当時中国人にはクリスマスがあまり浸透していなかったことを思い出します。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

私は韓国に住んでいたとき、中国人と一緒に生活していたことがありますが、やはりルームメイトたちにはクリスマスを祝う習慣がなく、24日になってもルームメイトたちは「クリスマス」のクの字も言いませんでした。「今日はクリスマスイブだよね。」と。私が口にだしてみても、「へぇ、今日がそうなの」という反応が返ってきただけ。そういうわけで、イブの夜は何事もなく過ぎていくだろうと思っていました。

 

その日の夜、私は近所の公衆電話に、実家に国際電話をかけにいきました。母とクリスマスだよねなどと話し、電話を切ると、なんとなくホームシックになって、真っ直ぐ家に戻れずに街をぶらつきました。大きな通りのパン屋やバーの窓ガラスにはクリスマスの装飾がしてあって、店内では重たいくらいに飾り付けられたツリーが、ピカピカとカラフルな光を放ってっていました。しばらくそれをぼんやりながめてたら、雪が降り出し、 ますます寂しくなって、とぼとぼ歩きながら家についたら、

「遅かったね!!心配したよ!」

と、なぜかルームメイトが玄関まで出てきて私を迎えました。部屋にはいると、大きなケーキが置かれていました。

「今日は、クリスマスよねぇ。」

と、一番仲良しのLが言い、一目見て、私はそれが自分のために用意されたものだということがわかりました。

「どうしたの、クリスマスってしないんじゃ…」

「いいじゃないの、ここは韓国なんだし。楽しんだってさ。」

と誰かが言って、シャンパンを勢いよく開けました。 みんな普段はシャンパンなんて飲まないのに…。

 

プレゼントだよ、と、包装された包みを渡され、 開けてみたら箱にぎっしり干し柿がつまっていました。干し柿もケーキも彼女たちの収入から考えるととても高価なものでした。

「クリスマスは、日本では大切な日なんでしょ。 あんたがホームシックになってるんじゃないかと思ってさ。 私たちがいるから、さびしくないよ!」

私がずっと前に、クリスマスは日本では一大イベントで、プレゼントをもらって、ケーキやご馳走を食べる、と言ったのを彼女たちは覚えていました。そして、その日本では「特別な日」に、私が寂しい思いをしないように彼女たちなりの「クリスマス」を用意してくれていたのでした。胸がいっぱいになって、何も言えずにいる私の横で、私より先にルームメイトの一人が泣き出しました。

「なんだか、ホームシックになった・・・」

そういえば、彼女たちは韓国に働きに来て、何年も家に帰っていないのでした。 私なんかよりずっとずっと寂しい思いをしているはず。クリスマスの雰囲気だけで、なんとなく寂しくなっていた自分が恥ずかしくなりました。その後は、みんなでおなかいっぱい干し柿とケーキをたべて、お酒を飲んで。歌を歌って。 とても幸せな夜は更けて行きました。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

クリスマスというと、あの彼女たちと過ごした一夜を思い出します。ぎこちない手つきで開けられたシャンパンと、ちょっと変わった干し柿のプレゼント。外国人のルームメイトのために、彼女たちが準備してくれたことが嬉しくて。彼女たちにはもうしばらく会っていませんが、今はそれぞれ家庭を持ち、きっと家族と楽しいクリスマスを過ごしていることと思います。

 

現在中国では、クリスマスツリーや雑貨の国内向け需要が年を追うごとに伸びており、クリスマス前になると街中では日本と同じような飾り付けが見られます。国際交流を強化している中国には、外国の文化が流れるように入り込んでいます。特に若者たちは、新しいものを柔軟に受け入れているようです。

 

みなさんも、素敵なクリスマスをお過ごし下さい。

祝大家圣诞快乐及新年快乐!(メリークリスマス、そしてよいお年を!)