第102回 卒業式

卒業式シーズンですね。親しくしている中国人の友人Yのお嬢さんが去年中学校を卒業しました。先日ニュースで卒業式の風景が流れ、ふとそのときのことを思い出しました。娘さんの卒業式の前日、たまたまYに会い、明日娘が中学を卒業すると聞かされ、とうとう彼女も高校生か、日本語もだいぶうまくなり、高校にも無事合格してよかったね、などと話していて...

「それで、明日はYか奥さんが卒業式に行くんだよね?」

「行かないよ。」

「あ、仕事が忙しくて行けないんだ?」

「いや、そういうわけじゃないけど。卒業式って普通、親は行かないでしょう?」

「普通行くでしょう?・・・日本では。」

「ええ!行くものなの?!」

Yは驚いた顔をしました。

 

Yの話では中国では人口が多く、生徒だけでも数千人規模になるので、入学式にも卒業式にも運動会にも親が参加することはないそうです。まず、全校生徒全員と保護者を同時に収容する場所がなく、体育館にも運動場にも全員が入りきらないというのです。あの中国の人の多さを知っていると、それもそうだな・・・と納得してしまいます。

 

「日本では卒業式と入学式は一大イベントで、ほとんどの生徒の親が来るよ。Lちゃん( Yの娘さん)だけ誰もこなかったら、淋しいんじゃないかなぁ。子供にとっても大切な節目だし、行けるなら行ってあげたら?」

「そうだよね。どーしよう、僕か奥さんが明日有休取らなきゃいけないけど、急すぎるから取れるかなぁ。」

「あとね、卒業式に保護者が着ていく服だけど、ジーンズやラフな格好で行く人はあまりいないかも・・・特にお母さんたちは、かなり着飾ってくるから、奥さんが行くなら、いつものジーンズはやめて、フォーマルなスーツか華やかな色のスカートにしたほうがいいと伝えて。」

「え~!?普段着だめなの!?うちの奥さん、スーツなんて持ってないよ。スカートもないかもしれない・・・。どうしよう。」

Yが焦っているので、私の服の中で適当なものを貸すことにして、服の問題は解決。

 

「それにしても、本当に生徒全員の親が行くの?親が式に出られない子はどうするの?それに、チェックもなく、その日は親じゃなくても、誰でも学校に入れるんでしょう?危なくないの?」

中国人らしい質問をぶつけられました。両親が忙しくて参加できない場合は、おじいちゃんおばあちゃんが来たり、とにかく身内が見に行くもので、「見せる」ために、一人一人に時間をかけて卒業証書授与したり、呼びかけがあったり、歌があったりするんだよ・・・と説明。中国の学校は周りを高い塀で囲っていて、大きな鉄の門は部外者が入らないよう常に閉まっており(警備がいる場合もある)、セキュリティの面ではかなり厳しいのです。それと比べると日本の学校は門も開けっぱなしだし、塀は低いし、誰でも入ってください・・・と、言わんばかり。卒業式には特にたくさんの人が出入りするので、不審人物が出入りしても分からないですね。今のところ札幌市内の卒業式や入学式で事件があったという話は聞かないよとは言ったもの、最近は不審人物が校内に侵入するというニュースもよく聞くので、彼が心配するのもよく分かるのでした。

 

結局Y夫妻は二人とも休みを取り、式に出席したのでした。その数日後、式はどうだったかと尋ねると・・・

「感動して、涙が出たよ~。卒業式っていいものだね。来年は次女が小学校を卒業するから、そのときまた式に出るときには、スーツのレンタルよろしくね。」

「それはいいけど、小学校は、子供たちもスーツやらワンピースやらで正装してくるよ。ネクタイ締めてくる子もいるくらいだから。次女の服も考えないといけないかも。」

「大丈夫。次女もあんたの服でいいよ。身体が大きいから、きっと着られるでしょう。」

その中国人らしい大胆さに思わず笑ってしまいます。きっと彼女はこんなオバサンの服なんていやだと思いますが・・・。