第104回 私の小さな友人を紹介します①

私には、小さな中国の友人Aちゃんがいます。彼女はお母さんの仕事で、小学校中学年の時に中国から日本にやってきました。お母さんはバリバリのキャリアウーマンで、新しくできた日本の支店を任されていました。来日したばかりの頃、Aちゃんは日本語を全く話せなくて先生の話が聞きとれず、友達もなかなかできませんでした。そして、習慣の違いから誤解を受け、クラスメイトから心ないことを言われたり、意地悪をされることも度々ありました。

 

お母さんは、日本に来てからだんだん元気のなくなっていく彼女を心配し、

「そんなに辛いなら、中国に帰ろうか?」

と聞きましたが、彼女は

「お母さん、まだ日本に来たばかりだよ。私、最近日本語がやっとわかるようになってきたの。辛くても今ここで帰ったら、中途半端でやめちゃうことになる。私は帰らない。頑張るよ」

と言ったそうです。この話を聞いたとき、なんて強い子だろうと思いました。私も父の仕事で小学校から高校まで転校を何度もましたが、日本国内での転校でも辛いことがたくさんあったのに、外国から来て言葉も習慣も全く違う環境の中に入れられて、孤独と戦いながら「頑張るよ」と。私ならその年齢の時にそう考えることはできなかったと思います。

 

彼女は日本の学校にとけ込むために、一生懸命日本語を覚えました。学校から帰ってきてからは、遅くまで宿題+日本語の学習。最初はお母さんがひらがなを教えていましたが、(お母さんもあまり日本語は話せない)すぐに彼女の方が上手くなり、学校での成績も上がっていきました。幸いなことにその後、担任の先生が適切に指導をしたおかげで、彼女に対するいじめはなくなり友達もできはじめ、学校生活を順調に送れるようにもなりました。

 

数年後、彼女の日本語は私たち日本人と何ら変わらないレベルのものとなりました。特に発音が素晴らしく、普通は中国人が日本語を話すとき、注意してよく聞くとどんなに上手い人でも中国人独特の発音がどこかに残っているものですが、彼女にはそれが全く感じられません。海外に家族で住んだ場合に、子供が親より先に現地の言葉を覚えてしまうというのはよくあることで、中国滞在中、ロシア人女性教授の5歳の子供が、いつも中国人と遊んでいるので中国語がペラペラになり、母親の通訳をしていたり、現地の幼稚園に通う韓国人の子供が、両親が聞き取れない中国語のTV番組を見て一人で笑っていたりということもありました。(もちろん短期間で上手になったのは、彼女の努力もあると思います。)

 

彼女はいつも夜遅くまで働いているお母さんを支えています。彼女のお母さんは、日本語があまり得意ではないので、家の電気や水道の不具合や宅急便などで業者とやりとりするときも全部彼女がやらなければなりません。先日、Aちゃんから電話をもらったときも。

「ちょっと忘れちゃったんだけど、家全体の電気を入れるスイッチのこと、日本語でなんて言うんだっけ?」

「ああ、『ブレーカー』のこと?何かあったの?」

「電気の調子が悪くて、電力会社に言わないといけないの。」

「それなら、私が電話してあげようか?」

「いいの、大丈夫。自分で言えるから。」

しっかりした子だな、とつくづく思います。まだ中学生だとはとても思えません。今では彼女がお母さんに日本語や日本の習慣について教えてあげていいます。小学生のころから日本人に囲まれてすごしているだけあって、普通の留学生よりも日本を理解しているのです。

 

②に続く。