第107回 お弁当はいらない

中国人男子と付き合っている私の友達は毎日彼氏にお弁当を作ってあげています。が、あるとき彼氏が言ったそうです。

「お弁当作んなくたっていいよ。早起きするの大変でしょう。うちの母が父にお弁当を作っているのを見たことがないし・・・」

友達はたいそう驚いて私に聞きました。

「彼のお母さんて一回もお弁当作ったことないんだって。中国ってどうなっているの?」

 

中国は会社の中に食堂があるところが多く、昼は会社で食べる(昼食は無料で提供される場合が多い)人が多いです。また、私が前に住んでいたハルビンの大学近くには、お昼の時間になると毎日のように「盒饭(フーファン)」というお弁当を台車で売りに来ていました。ボールに入って並べられているおかずをその場で選んでプラスチックの容器に入れてもらいます。台車には電気が通っていて、おかずをあたためているので温かいものがすぐに食べられます。それで確か当時2元~4元(45円~60円)くらいでした。このような「お弁当」を利用する人もいますし、外の食堂で食べる人もいます。また、中国の昼休みはとっても長いので、家に帰って食べる人もいました。留学当時、周りの中国の会社の昼休みは二時間半くらいあったのです。家に帰ってゆっくりご飯を食べ、昼寝までする人もいました。銀行や郵便局も昼から2時半ごろまで開かないので、急いでいるときは困ることもありましたが…。(最近は外資系の会社も増え、昼休みの長さもだいぶ変わってきたようですが、やはり国営や役所などでは変わらないようです)

 

友達は

「それだけじゃないの、彼氏に『言いにくいけど、冷たいご飯は苦手で』って言われちゃって・・・」

と、かなり凹んでいる様子でした。彼氏のお母さんがお弁当を作らなかったことの理由の一つに、中国人が冷めたご飯やおかずを食べたがらないということがあると思います。中国にいるときに、朝作ったおにぎりを昼に食べようとしたら、

「あっためて食べな!冷たいご飯は胃に悪いから!」

と周りの中国人によく言われました。お弁当を持っていくと昼までには冷めてしまうので、小さい頃から冷たいお弁当のご飯に慣れている日本人と違い、電子レンジでもない限り、持って行きたがらないと思います。私が中国に留学していた頃は一般家庭や普通の会社で電子レンジを見ることはありませんでしたが、今はかなり普及していて、お弁当を持ってくる人もいるという話を聞きます。が、やはり作りたてで熱々の湯気が立ち上っている食事を好む中国人は、お弁当というものにあまりなじみがないかもしれません。

 

私の夫も中国人ですが、彼女の話を聞いて、付き合い始めのころ同じようなことを言われたのを思い出しました。会社に電子レンジがなく、温められなかった・・・と、お弁当を全く食べずに持ちかえってきて、ショックを受けたことがありました。でも私はその習慣を理解していたので、作らなくていいなら楽でいいやと、プラスに考え、自分の分だけ作っていました。

 

話は脱線してしまいますが、留学中、お昼ごはんについて驚いたことがあります。大学生や近所で働いている人たちが、お昼近くになると小さな鉄の洗面器を持って外をうろうろしているので、顔でも洗うのかなと思ったら、食堂でそれにご飯とおかずをいれてもらっているのを目撃!ああ、あれは食器なんだと納得しました。(鉄でできた、取っ手のついた特大のコップを使っている人も)中国人の家にお邪魔してみると、その洗面器(日本人にはどう見ても洗面器にしか見えませんでした)は、料理するときにボール代わりにもなる万能な容器なのでした。今は百貨店やスーパーでも、日本で売っているような食器を目にすることができますが、当時、おしゃれな食器で食事をするという考えはあまり浸透していなかったのです。 現在の中国でも例の洗面器を見ることがありますが、それを持って昼食時、外をうろうろしている人というのは都会ではあまり見なくなりました。

 

話を戻しますが、その彼女は私の話を聞いて、それなら保温ジャーつきの弁当箱に変えて彼氏に持たせることにしたと言いました。あくまで彼に尽くそうとする精神と、日本の「弁当文化」を押し通そうとする姿勢にいろいろな意味で感心させられるのでした。