第39回 「できません」とは言わないで

少し前のことですが、友人が働いている金属加工の会社が、中国と取引を始めようと打ち合わせを重ねていました。「これをこのように加工できるか」「これを1週間以内にできるか」などという中国側からの質問に、正直に「できない」「それは無理」と答えたら、最初は提携に積極的だった中国側の態度ががらっと変わってしまったがどういうわけなのかと、友人に質問を受けました。

 

中国企業は、仕事を受けるときに「このようにできますか?」という相手の要求に対して、「できない」とはなかなか言いません。納期が間に合いそうになくても、やったことがないような加工でも「できます!」と言うケースが多いです。日本のように、もしできなくて相手に損害を与えるようなことになっては大変なことになるという考えはあまりなく、とりあえずは受注してやってみよう、なんとかなるだろうと考えている場合が多いのです。なので、結局期限が守られなかったり、発注したデザイン通りに商品があがってこなかったり、ということのはよくあることで、昔から日本企業とトラブルになっているというのはよく聞く話です。

 

それは個人でも同じで、中国人が会社の求人の面接に来た場合、面接官が「○○はできますか?」と聞いたら、たいていの場合「できません」とは言いません。実際中国にある大手日系企業の人事の方から話を聞いたことがありますが、面接に来た中国人に「日本語はできるか」と聞いたところ、全員が全員とも「できます、得意です」と答えたそうです。「ではそこにある新聞を読んでみてください」と言ったら、半分の人がまともに読めませんでした。中国人はそういう場所では、「少しできる」でも「かなりできる」と言います。そして大半の人が、今はできなくてもなんとかなる、やりながら覚えればいいと思っています。

 

また、中国企業に面接に行った日本人から聞いた話ですが、彼女は面接で「英語はできるか?」と聞かれたので「それほどできませんが、日常会話くらいならなんとか」と答えました。彼女は以前ニュージーランドに4年いて、英語はビジネスで使っても問題ないくらいのレベルでしたが、謙遜してそう言ったところ、英語で自己紹介してみるように言われました。彼女の流暢な英語を聞いた面接官は「そんなに上手いのになぜはっきり英語が得意だと言わないの?自信がないの?」と言ったそうです。

 

最近では中国の経済成長に伴い、中国の企業や個人から日本企業が発注を受けるということも徐々に増えているようですが、中国と取引をするときは「できません」「無理です」は連発しないほうがいいですね。どう考えてもできそうにないときでも、「できない」とは言わずに、「それでは、これをこうしてみるのはどうですか?」などと提案するような形をとったり、「この商品は一週間以内に納品できますが、もう一つの商品は二週間後に納品します」などとちょっとでも譲歩しているところを見せたほうがいいと思います。

 

中国企業で日本人が働く場合も、面接でも会社に入ってからも「できません」は極力連発しないほうがいいです。「できます」と言って、これから働きながら身につけてやる!!くらいの心づもりでいたほうがいいですね。

 

日本ではできないことをできないと言ったほうが、トラブルなく物事が進むことが多いのですが、普段外国人の中にいると、こういう日本だけの「常識」って意外にたくさんあるのだと改めて思うのでした。