第57回 お好きな色は?

中国で短期ホームステイをしていたときのこと。ホームステイ先のおばさんが、私に服を買ってくれるというので、一緒に街へ。ベージュや紺のセーターを手にとって見ていたら、おばさんは

「だめだめ!そんなくすんだ色は買うんじゃないの。若いんだから、もっと鮮やかな色にしなさい。」

と、私の手に赤や黄色の服を持たせます。うーん、原色はちょっと・・・と考えていると、

「日本人はなんでそういう色が好きなのかね。あんたの友達(日本人留学生)も、街で見掛ける日本人観光客もみんなそういう色ばかり着ているよ。ベージュや灰色や紺なんて年取った人が着るような色なのにねぇ。」

とおばさん。以前、同じことを言われたことがありました。私がたまたま濃いピンクの花柄のカットソーを着て韓国語の授業に行ったら、先生から

「あら、めずらしいですね。日本人はあまりそういう色が好きじゃないのではないですか?日本の留学生は、いつも目立たない色で模様のない服を着ていますよね」

と言われました。

 

確かに割合で見ると、日本人は日本風に言えば「シンプルで、落ち着いた無難な色」を着こなしている人が多いように思います。10代の若い子たちは例外かもしれないけど、周りを見ると、人目を引くような鮮やかな色を着ている人はあまりいません。自分のクローゼットを覗くと、おばさんが言ったようなくすんだ色ばかり・・・。使いやすい、合わせやすいからと言う理由でそんな色ばかり選んでしまいます。

 

それに比べると、思い出してみれば韓国留学時代の中国人クラスメイトたちは、実に色鮮やかな色の服を着ていました。中国ではおめでたいとされる赤い色が好きだと言う友達が多く、真っ赤なセーターやワンピースだったり、日本人は、キャミソールやカットソーなど、少し見える程度に差し色として色の強い物を着ることがあっても、特にコートやダウンなど外に着るものは無難な色を着ることが多いのだけど、彼女たちのコートは黄色だったり、赤だったり、ブルーだったり。

 

「曖昧」だと言われる日本人は、着る服でも目立たない無難な色を選ぶのかなと思いました。どこでも自分の意見を主張する中国のクラスメイトたちを見ていると、着ている服からも存在をアピールしているような、そんな印象を受けます。

 

彼女たちは私たち日本人の格好を「成熟(chengshu/チェンシュー/大人っぽい)」と言い、私たちは彼女たちの服装を「鮮やかだね~」などと言いながら細かくチェック。お互いその言葉に「その格好はちょっとできないわ」という意味を含めながら。

 

おばさんは私の手に黄緑の靴と鮮やかな黄色のカットソーを握らせて、レジに連れて行こうとします。日本では着れないかもしれないな、ここではっきりとこれはいらないと主張するべきか。でもおばさんが気を悪くしたらどうしよう・・・。私は結局はっきり言えない典型的な日本人なのでした。