第63回 妊婦に優しい国

妊娠中、私のつわりは長く、約二カ月続きました。最初はなんとか出勤していましたが、10週目くらいから起き上がるのも苦しくなり、全く職場(中国系企業で、社員の大半は中国人)に行くことができなくなってしまいました。それから症状はひどくなるばかりで、結局一ヶ月以上欠勤することになってしまい、解雇を覚悟したのですが、たびたび電話をくれる中国人上司は、

「よくなるまで出てこなくていいよ。お腹の赤ちゃんのことを一番に考えて」

と言ってくれ、私がいなかった一ヶ月の間、ほかの社員と協力して私のいない穴をうめてくれていました。

 

更に、よくならないようなら鍼の治療に行ってきなさい…と、中国鍼の予約までしてくれました。中国鍼は打ったその日は大変効き目があり、何も食べられなかったのに、手の甲のツボに鍼を打つと食欲がわき、ぺろりとパンをたいらげることができました。数回治療してもらいましたが、上司の人脈のおかげで治療費は無料でした。中国では親しくしている間柄やその紹介の場合は、料金を取らなかったり、優遇してくれることがよくあります。

 

つわりの間だけではなく、妊娠したと報告した時から同僚や上司たちは私に対してとても気を使ってくれ、職場で掃除していたら雑巾をとりあげ、今はやらなくていい、とにかく休みなさい、具合が悪いなら出勤しなくていい、走るな、重いものを持つな、手を伸ばすな、疲れたら応接間で寝なさい…などなどの言葉をしょっちゅうかけてくれ、無理していないか様子を見に来てくれたり、いつも朝は私がお茶を入れていたのですが、自分でいれるようになった人もいました。また、私が妊婦なのに痩せていてお腹が小さいと心配して、これを食べなさい、あれを食べなさいと何人もの人が差し入れをくれたりもしました。(日本では今妊婦の体重制限が以前より厳しくなり、私も病院で10kgまでしか太ってはいけないというように指導されましたが、中国では体重制限はなく、妊婦はたくさん食べて太っていたほうがいいという考えだということでした。私は決して痩せていたわけではなく、妊婦として標準的な体重だったのですが、中国の妊婦からみると細いので心配になったとのだそうです。)

 

「なんでこんなによくしてくれるの?中国は妊婦に優しい国なんだね」

と同僚に言うと、

「日本と比べると中国は一人っ子政策で一人しか産めないから何かあったら大変だし、特に大事にするのかもしれないけどさ、妊婦に親切にするのは当たり前のことでしょ?誰も迷惑だと思ってはいないよ。中国では妊婦が臨月まで働くのが普通だし、周りがサポートしてあげないとね。」

とのことでした。中国は予定日の15日前から産休に入り、98日間の産休があけるとすぐに仕事に復帰します。(もっと早く復帰する人もかなりいます)

 

共働きが一般的な中国では、お腹の大きな妊婦さんが職場にいるのが普通のことで、体調が悪くて休まれたときには、周りがサポートすることをだれも特別なことだと思ってはいないのだと知りました。おかげさまで、私も体調は万全ではなかったのですが8カ月に入るまで仕事を続けることができました。職場の同僚、上司には心から感謝しています。