第81回 ネクタイはイヤだ

「日本人男性はなぜ毎日ネクタイをするの?それはいつからの習慣なの?」

と、中国人の友達からの質問。彼は日本と取引のある中国の貿易会社に勤めていて、日本から顧客が来るとどんなに熱くてもネクタイをしないといけないということがかなり不満なようでした。

「苦しいしさ~、めんどくさいし、熱いし~。結びなれてないからネクタイうまく結べないんだよ。しかも、ネクタイだけでなく、スーツの上着も着ないといけないでしょう・・・」

連日40度近くなる広州に住んでいる彼は、勘弁してほしいよ、とため息をつきます。

 

中国の一般的な会社では、出勤するときに特にスーツを着なくてもよいのです。男性はポロシャツやTシャツにチノパンやスラックス、女性もジーンズにTシャツ等、ラフな格好で出勤している人が多いです。中国留学中には、スーツを着てネクタイを締めている男性を街中で見かけたことがなく、男性はいつ仕事に行っているのだろう・・・と不思議に思ったことがあります。(ランニングに短パン姿の人を中国の旅行会社で見たこともあります・・・)

 

逆にこの友人は日本に初めて出張で来たときに、男性がみな同じ色のスーツに身を包みネクタイを締めていることに驚き、大袈裟にも「これは何かのイベントだろうか?街全体が(スーツの人で)黒くなっている!」と思ったそうです。

「夏にエアコンつけながら暑苦しいスーツを着たり、冬にセーターや綿の入った服を着ないで震えながらシャツとスーツで過ごすってのが到底理解できないよ。制服みたいに個性もなくみんな同じ格好でさ。中国みたいに気候に合わせた自由な格好をすればいいのに。だいたい、スーツ着るのって日本の習慣じゃないでしょう。全く日本は『崇洋媚外(西洋の文化を崇拝し、外国にかぶれる)』だよなぁ」

日本では男性が出勤時にスーツを着るというのは、かなり前から習慣化されていて、日本人の自分としてはもうなんとも思わなくなっているのですが、「崇洋媚外」と言われると、確かにそうかも・・・と思いました。

 

日本では食べ物だとか着るものだとか、確かに日常生活の様々なことが西洋化されています。今の日本人にはそんな気持ちはなくても、スーツという西洋の正装が日本人の生活に入ってきた頃は、正に「崇洋媚外」だったのかもしれません。「北京や上海の繁華街で、スーツに身を包んで、固まって歩いているのは日本人」とよく言われるが、海外にいても日本企業のサラリーマンの様子は変わらないのですね。

 

最近では、外資系企業や海外と取引をする会社の増加に伴い、中国でもスーツを着る人が徐々に増えているようです。「崇洋媚外」かどうかはわかりませんが、国際社会でいろいろな国と付き合っていくには、必要な変化なのでしょう。それが当たり前になれば、私の友達が感じたような不満もなくなるはずです。完全にそうなる日もそう遠くないかもしれないと、最近の国際社会で発言力を強めている勢いのある中国を見ていると思うのでした。