第92回 納得のいかない写真

中国で結婚すると、「結婚証」という赤い表紙のはがき大くらいの証明書が各自一つずつもらえます。(私と中国人の主人は、日本国内で先に手続きしてしまったため、「結婚証」は持っていません。中国で先に手続きすれば、外国人との婚姻の場合でも「結婚証」がもらえます)

 

中国国内で結婚をする場合は、民政局(市・区役所のようなところ)というところで手続きをし、そこで「結婚証」を発行してもらいます。(離婚する場合は「結婚証」を返却しなければならず、そのときは「離婚証」というものがもらえます。)その「結婚証」の中には、二人で並んで撮った写真が貼られ、自分と配偶者の名前や生年月日、民族(日本には民族の記載はありませんが、中国は56の民族があるので、いろいろな証明書にこの民族が記載されます)等が記載されます。この結婚証はとても重要なもので、結婚している証明が必要なときは、この「結婚証」を提示することになり、紛失した場合は再発行の手続きを速やかにしないといけません。(けんかで破ってしまい、再発行に訪れるひともいると民政局の人に聞きました)

 

日本にいる中国人同士が何らかの事情で帰国せずに日本で結婚する場合は、駐日本中国大使館または領事館で結婚証を作ってもらいます(中国人と外国人の婚姻の場合は発行されません)。先日私の友達が大使館で手続きを済ませ、結婚証を受け取ったときのことです。彼女は嬉しそうに結婚証を見せてくれたのですが、少々気になるところがあるといいます。

「写真なんだけど・・・、なぜか私のほうが背が低くなっているんだよね。」

ピンク色の壁をバックに笑顔で撮られた二人の結婚証の写真は(中国はパスポートの写真も笑顔で撮っても問題ないので、結婚証の写真も笑っていても特に問題ないようです。)、ご主人のほうが頭一つ分くらい高くなっていて、肩の下くらいまで写っているが、彼女は首の下あたりまでしか写っていません。

「私たち夫婦の身長は同じくらいなの。この写真を撮った日は高いヒールの靴を履いてて、主人より頭が少し出ていたかもしれないわ」

写真館のカメラマンは、わざわざご主人のほうを台に上がらせて、二人の身長にかなりの高低差をつけて写真を撮影したといいます。私はその写真を見ても特に違和感を覚えず、男の人の背を高くするということを聞いても特になんとも思いませんでしたが、彼女は、中国の写真館ならきっとそのまま写真を撮るだろうといいます。

「何でわざわざ女性を低くするのか理解できない」

と彼女は言った。同じ高さでいいんじゃない?と。彼女にそう言われて、他の友達の結婚証を見せてもらって見比べてみましたが、やっぱり日本で作った結婚証の写真は男性のほうが背が高く見えるように撮られており、中国で作られた結婚証の写真は、意識的につけられれた高低がなく自然な感じで並んでいて、わざわざ同じ背の高さで写すために女性を台に上がらせることもあるという話でした。

 

日本の写真館では個人の証明写真を撮ることが多く、このような二人並んでの証明写真(?)のようなものを撮ることは少ないので、何に使うのか尋ねられたそうです。彼女が、なぜご主人を台の上に上がらせるのかカメラマンに聞いてみたところ、「このように撮ったほうがバランスがいいから」という答えだったそうですが、彼女は納得がいかないようでした。

「バランスって、それは日本社会のいうバランスだよね。やっぱり未だに『大男子主義(亭主関白。男性の地位が高い社会のこと)』から抜けてないんだなぁ、日本は」

と、手厳しい意見。写真一つでもやはり違いがあるものだなぁと思うのと同時に、この写真を見てなんとも思わないあなたはやっぱり日本人ねと、ちょっとがっかりしたように言った彼女に中国の女性の強さを改めて感じるのでした。 。