第96回 北京滞在記①

のっぴきならない事情があり、11月末に急遽北京へ行くことになりました。一歳半の娘が4時間40分のフライトに耐えられそうにないのと、帰国した友人たちから北京の空気汚染がすさまじいと聞いていたので、今回は両親に預け、私ひとりで行くことにしました。週三日しか直行便がなく、三泊四日のスケジュールになりました。出発の日、ママが何日もいなくなるとは知らずに機嫌良くおじいちゃんと遊ぶ娘に隠れて、こっそり家を出ました。

 

飛行機の機内は乗客の8割ほどが中国人農業研修生で、とっても賑やかでした。誰もいない座席を三つ占領して寝転がったり、荷物を広げて買ったものの品評会をしたりしていました。トイレから戻ると、若い女の子が私の座席に座っていました。

そこわたしの席なんですけど、と言ったら、あ、そうなの?と、隣にずれました。後方座席は混んでいたので、空いている前方に来たようでした。研修を終えて家に帰るという彼女はすごい荷物で、上の棚に入りきらないとても大きなカバンを足の下に置いていました。(隣の席にはみ出していました)小さな子供がいてお土産を沢山買ったと聞いて、わたしも娘はどうしているかなあ…と思いました。

 

北京空港に着陸すると、機内から見てもものすごい霧ですぐそばの建物がぼやけて見えるほどでした。そして飛行機のドアが開くと、微かに焦げたような…石炭が燃えたような匂いがします。飛行機の燃料の匂いかと思いましたが、すぐにこれが北京の空気の臭いだと気づきました。空気の汚染は、本当に深刻なようでした。市内に向かうタクシーの車内から外を眺めると、深い霧がどこまでも続いていて、遠くの方は全く見えません。焦げたような臭いにもすぐに鼻が慣れ、何も感じなくなりました。街中では、マスクをしている人はほとんどいませんでした。

 

翌日、天気は曇り。昨日の霧はすっかりなくなっていました。冬になると特に霧の日が多いということで、三日に一回くらいは霧が立ち込めるということでした。午前中の用事が終わると、義姉(私の夫は中国人です)が、抱っことおんぶで肩こりのひどい私を近所のマッサージ店に連れて行ってくれました。

 

店長さんらしき人が、

「疲労が激しいなら拔罐(日本語では吸い玉、カッピングというのでしょうか)やんなさい、絶対効果あるから!」

と、勧めてくれたのでチャレンジしてみることに。

 

年齢不詳のおばちゃんがものすごい力で背中を揉み解してから(揉んでからじゃないと効果がないようです。)ガチャガチャとガラスの玉が入ったかごを運んできました。

「怖くなるから見るんじゃないよ~」

と言うと、ハサミで挟んだ布に火をつけて玉の中に入れ、真空にします。火を見た瞬間、ギャー!と叫びたくなりましたが、それより早く、おばちゃんは次々に背中に玉を吸いつけていきます。

 

痛い!!背中の皮及び、中の内臓まで引っ張られる感じ。しばらくすると痛みはなくなったので、写真を撮ってもらい、自分の背中を見てみると、吸われている玉の中の皮膚がどす黒い紫になっていました。悪いところほど黒い色になるそうで、一週間くらいしたらきれいになるということです。

「これを外国人が見ると、虐待っていうかもね」

と、おばちゃん。

 

同じく中国に昔からある民間療法の刮痧もものすごい痣になるため、アメリカの華僑が子供に施術をして、虐待だと通報された・・・という映画がありました。

 

そのお店で働いている人は全員田舎から出稼ぎに来ているひとたちでした。ある人はだんなさんとも別々の場所で働いていて、家族に会えるのは年一回、何年も家に帰っていないというひともいました。田舎は結婚が早いので、私と同じ年くらいで15歳の子供がいるというひとも。

 

「子供のために頑張っているよ!早く旧正月にならないかな、家に帰りたい。私は一度も学校に行ったことがないから、字はあまり読めないけどいつかお店を開いて、家族と一緒に暮らすの」

と、その中で一番若いという女の子が言いました。彼女は身体のことをよく勉強していて、脚のここが痛い時はこうすればいいとか、何を食べたらいいとかを教えてくれました。

「いつかきっとお店を開けるよ、そしたら、お客さんとして行かせてね」

と言って、連絡先を交換しました。 国が違っても家族を思う気持ちは変わりません。彼女の夢がいつか叶いますように!!

 

拔罐の効果は…正直、よくわかりませんでした。一度ではだめなのでしょうか…。