第111回 やっぱり白タクには乗りたくない②

そんな話ももう昔のことで、北京オリンピックの直後に訪れたら、北京のタクシーはどれも新しくとてもきれいになっていて、運転手のマナーも留学中に比べると格段によくなっていました。メーターをいじるなんてことも今はほとんどなく、そんなに緊張しながら乗らなくてもよくなりました(地方から来た人や外国人が乗ると、遠回りして料金を割り増しするというようなことはたまに聞きますが)。以前は空港に着いてゲートを出たとたん、蟻のように群がってきた客引きも今は見かけることはなくなりました。(田舎の空港や駅は別ですが)。タクシー乗り場があり、タクシーを待つ長蛇の列がスムーズに進んでいくよう、空港スタッフによってきちん管理とされています。(それでも横は入りする人がたまにいて、けんかになっていますが・・・)

 

留学中、中国の空港や駅など人が集まるところには、正式に登録していない白タクがかなりいて、その客引きは正規タクシーよりすごかったのですが、もう大きな空港では見かけなくなりなした。滞在中に白タクを見たのは、体調が悪くて病院に行ったときだけでした。(その白タクは日本車で、最近は車の質まで上がったのかと驚かされました)正規のタクシーをすぐ拾えたので白タクには乗らなかったのですが。

 

私が白タクに乗ったのは一度だけ。その前の年に福建省の福清市に行ったときのことです。私が福清の友達と一緒に、アモイから長距離バスで福清に着いた時間は夕方5時ごろ。退勤時間と重なって、タクシーがなかなか拾えない時間帯でした。私と友達がバスターミナルの前の通りに立っていると、すぐに灰色の車が止まりました。運転手は福清語でなにやら話しかけ、友達は顔をしかめて首を振ります。(私は北京語しかわかりません)運転手はしつこくなにやら言っており、友達はしばらく考えて

「タクシー拾えなさそうだから、この車で行く?家までは50元くらいだけど30元でもいいって。」

と私に言いました。二人とも疲れていたので、その車に乗ることにしました。

 

しばらく走ると運転手は車を止め、道路の脇に立っている2人の女性に話しかけました。

「どこまで行くの?乗っていかない?安くしとくよ」

と福清語で言っているのだと友達が教えてくれました。

「え~相乗り!?荷物こんなにあるのに?」

友達は大きな声で言いましたが、運転手は気に留める様子はありません。2人の女性が乗り込んできます。相乗りだから運賃が安かったのだということを知りました。またしばらく行くと、今度はおばあさんに乗っていかないかと声をかけました。すでに荷物と4人の乗客で社内はギュウギュウ。

「お嬢ちゃんたちがもうちょっとつめれば・・・」

「乗れるかっ!」

運転手の声をさえぎり、友達が叫びました。

 

結局、5人乗りの車に無理やり6人乗せて、白タクは薄暗い道を進んでいきます。しばらく行くと日がとっぷりと暮れてしまったが、進めば進むほど道には外灯がなくっていき、最後には車のライトだけを頼りに走っている状態となりました。真っ暗だというのに、車はスピードを落とす気配がなく、80キロ以上で飛ばしています。対向車もものすごいスピードで走ってきます。高速道路を走っているのと何ら変わりありません。車の中はいつのまにか私と友達だけになっていました。ドアの上の掴まるところをしっかりと握り締め、無言になっている私たちに運転手は、

「お嬢ちゃんたち怖がってんの?そうだね、こんなに暗いし、今からどこかに連れて行かれて、俺に売り飛ばされるかもしれないからねぇ」

などど笑えない冗談を言いました。友達はミラー越しに一瞥するだけでしたが、私はそれより事故に遭うのが怖いよと思いました。

 

1時間ほど走って、友達の家に着きましたが、乗っている間、全く生きた心地がしませんでした。正規のタクシーに乗ってもスピードを出すのは同じだったかもしれないけど・・・、とても窮屈だったし、つまんない冗談もマイナス。やっぱり白タクにはできれば乗りたくないと思ったのでした。